一筆座標面積計算書とは、ある一筆(=登記上一体の土地)について、各境界点の「座標値(X,Y)」を基に、幾何学的に面積を算出した計算書のことです。公共測量や不動産登記の現場で用いられる正式な成果物で、トータルステーションやGNSSを使った高精度測量を前提とします。
この計算書では、以下のような情報が記載されます:
つまり、「図面ではなく数値で面積を証明する」書類です。
登記簿に記載されている土地面積(公簿面積)は、必ずしも現況と一致しません。なぜなら、明治・大正期の手計測、三角スケールでの縮尺読み取り、図面の誤差などが積み重なっているからです。
→ 誤差は平気で1坪(3.3㎡)前後出ることもあります。
たとえば「100坪と思って契約したが、実測したら96坪だった」といったケースでは、面積の食い違いが価格の再交渉・トラブルに直結します。
そこで登場するのが「座標に基づいた実測面積」。それを証明するのが一筆座標面積計算書なのです。
売買契約では、「公簿売買」と「実測売買」の2つの考え方があります。
実測売買を選んだ場合、取引価格の裏付けとして「正確な面積の根拠」が必要になります。そのため、座標計算に基づいた面積証明=一筆座標面積計算書が不可欠となります。
隣地との境界を確定した上で土地を分けたり、再建築や融資のために「一筆の土地を確定させる」必要がある場合、確定測量図+一筆座標面積計算書がセットで求められるケースが増えています。
※地積更正登記や分筆登記の申請書類に添付されるケースもあります。
金融機関は、融資判断の際に土地面積の正確性を重視します。とくに「公簿面積と実測面積が乖離している」場合には、座標面積に基づく評価を求めることがあります。
→ 一筆座標面積計算書を提出することで、融資審査の通過率を高める効果も。
この計算書は、個人で作れるものではなく、専門資格者による作成が必要です。
具体的には以下のいずれかの有資格者が該当します。
※売買の前後で測量図と一緒に納品されることが多く、売主側が手配している場合もあれば、買主負担で測量を依頼することもあります。
座標がいくら正確でも、「その座標が正しい位置にある」という保証がなければ意味がありません。境界確認の立会い(境界確定)が済んでいるかどうかが重要です。
実測面積が出たからといって、登記簿上の地積が自動で修正されることはありません。
→ 地積更正登記という別手続きが必要です。
売買契約時に「実測清算あり」の取り決めがある場合は、なるべく早くこの計算書を共有しないと、価格調整がトラブルの元になります。
立場 | 一筆座標面積計算書のメリット | 注意点 |
---|---|---|
売主 | ・土地価値の正当性を示せる | |
・境界トラブルの予防 | ・費用負担が必要 | |
・面積が減った場合は価格に影響 | ||
買主 | ・安心して購入できる | |
・将来的な分筆や建築に有利 | ・取得前に確認しないと損をする場合も |
一筆座標面積計算書は、「数値に基づく正確な土地面積」を証明するための測量成果物であり、不動産売買において価格の妥当性・境界の明確化・登記や融資の裏付けとして重要な役割を果たします。
不動産売買では、「この土地は何㎡なのか?」という問いに、口ではなく座標と計算式で答えることが信頼を生みます。
売主・買主いずれにとっても、トラブル回避と価値証明の観点から、しっかり活用していきたい資料です。