「一筆座標面積計算書」とは何か?

■ 一筆座標面積計算書とは?

一筆座標面積計算書とは、ある一筆(=登記上一体の土地)について、各境界点の「座標値(X,Y)」を基に、幾何学的に面積を算出した計算書のことです。公共測量や不動産登記の現場で用いられる正式な成果物で、トータルステーションやGNSSを使った高精度測量を前提とします。

この計算書では、以下のような情報が記載されます:

  • 各点の座標値(平面直角座標)
  • 境界線の辺長
  • 求積の順序と面積
  • 合計面積(㎡単位)
  • 測量者の署名・作成日・測量条件

つまり、「図面ではなく数値で面積を証明する」書類です。


■ なぜ必要なのか?

▼ 公簿面積=正確とは限らない

登記簿に記載されている土地面積(公簿面積)は、必ずしも現況と一致しません。なぜなら、明治・大正期の手計測、三角スケールでの縮尺読み取り、図面の誤差などが積み重なっているからです。

誤差は平気で1坪(3.3㎡)前後出ることもあります。

▼ 売主・買主のトラブルの火種に

たとえば「100坪と思って契約したが、実測したら96坪だった」といったケースでは、面積の食い違いが価格の再交渉・トラブルに直結します。
そこで登場するのが「座標に基づいた実測面積」。それを証明するのが一筆座標面積計算書なのです。


■ 不動産売買での具体的な使用場面

① 売買契約書における「実測清算」対応

売買契約では、「公簿売買」と「実測売買」の2つの考え方があります。

  • 公簿売買: 登記簿の面積を基準に価格設定。実測との差額は清算しない
  • 実測売買: 実測面積で価格を調整(例:○万円/㎡ × 実測面積)

実測売買を選んだ場合、取引価格の裏付けとして「正確な面積の根拠」が必要になります。そのため、座標計算に基づいた面積証明=一筆座標面積計算書が不可欠となります。


② 境界確認・分筆登記の裏付け資料に

隣地との境界を確定した上で土地を分けたり、再建築や融資のために「一筆の土地を確定させる」必要がある場合、確定測量図+一筆座標面積計算書がセットで求められるケースが増えています。

※地積更正登記や分筆登記の申請書類に添付されるケースもあります。


③ 金融機関による担保評価資料

金融機関は、融資判断の際に土地面積の正確性を重視します。とくに「公簿面積と実測面積が乖離している」場合には、座標面積に基づく評価を求めることがあります。

一筆座標面積計算書を提出することで、融資審査の通過率を高める効果も。


■ 誰が作れるのか?測量士?土地家屋調査士?

この計算書は、個人で作れるものではなく、専門資格者による作成が必要です。
具体的には以下のいずれかの有資格者が該当します。

  • 測量士または測量士補
  • 土地家屋調査士

※売買の前後で測量図と一緒に納品されることが多く、売主側が手配している場合もあれば、買主負担で測量を依頼することもあります。


■ 注意点と実務での取り扱いポイント

◉ 境界未確定では意味がない

座標がいくら正確でも、「その座標が正しい位置にある」という保証がなければ意味がありません。境界確認の立会い(境界確定)が済んでいるかどうかが重要です。

◉ 登記面積は自動では修正されない

実測面積が出たからといって、登記簿上の地積が自動で修正されることはありません。
地積更正登記という別手続きが必要です。

◉ 実測精算ありの場合は、早期提示が吉

売買契約時に「実測清算あり」の取り決めがある場合は、なるべく早くこの計算書を共有しないと、価格調整がトラブルの元になります。


■ コラム:売主・買主それぞれの視点

立場 一筆座標面積計算書のメリット 注意点
売主 ・土地価値の正当性を示せる
   ・境界トラブルの予防 ・費用負担が必要
   ・面積が減った場合は価格に影響
買主 ・安心して購入できる
   ・将来的な分筆や建築に有利 ・取得前に確認しないと損をする場合も

■ まとめ

一筆座標面積計算書は、「数値に基づく正確な土地面積」を証明するための測量成果物であり、不動産売買において価格の妥当性・境界の明確化・登記や融資の裏付けとして重要な役割を果たします。

不動産売買では、「この土地は何㎡なのか?」という問いに、口ではなく座標と計算式で答えることが信頼を生みます。

売主・買主いずれにとっても、トラブル回避と価値証明の観点から、しっかり活用していきたい資料です。